介護を必要とする人は高齢者を中心に、今後ますます増えていくことが予想されますが、肝心の介護基盤の整備や介護システムが不十分なため、まだまだうまく機能していないというのが現状のようです。
これは、いまだかつて、どの国も経験したことのない急速な少子高齢化社会を迎えてしまったがための難しさでもあり、少しでもよりよい社会を築いていくためには、どのような策があるのか手探りで模索し続けていることの表れでもあります。
そのため、介護の現場では、日々、めまぐるしく変化していますが、この波は介護福祉士をはじめとした資格制度のあり方にまで波及し、その見直し過程の中で生まれた資格のひとつが認定介護福祉士(仮称)≠ナす。
認定介護福祉士が新たに創設された背景(目的)には、主に次のような理由が挙げられますが、どうやらこの認定介護福祉士は、(一般)介護福祉士の上級資格として位置付けられているようです。
待遇改善による人手不足の解消! キャリアアップの場を増やすことで、介護福祉士のモチベーションを維持! より専門性を強めることで介護サービスの質を高める! |
そこで、介護福祉士の専門性と資質向上を目的とした上級資格認定介護福祉士≠ノなるには、どうすればよいのか・・・まずは、そのあたりの基礎知識から押えておきましょう。
介護福祉士の専門性や資質向上を目的とした上級資格認定介護福祉士≠ノなるには、日本介護福祉士会が開催している所定の研修を受けなければなりません。
これまで、認定介護福祉士の養成を目的とした研修は何回か実施されてきましたが、参考までに平成24年度に予定されていた研修概要と日程表を下記に示しておきます。
(平成24年度老人保健健康増進等事業) 日本介護福祉士会では、昨年度、厚生労働省の補助(平成23 年度老人保健事業推進費等補助金)を受けて、「認定介護福祉士(仮称)の在り方に関する検討会」を設け、認定介護福祉士(仮称)制度の構築に向けて検討して参りました。 認定介護福祉士(仮称)には、生活を支える専門職としての介護福祉士の資質を高め、利用者のQOLの向上、介護と医療の連携強化と適切な役割分担の促進、地域包括ケアの推進など、介護サービスの高度化に対する社会的な要請に応えること等が期待されており、本モデル研修は、この制度運用を目指して、厚生労働省の補助(平成24年度老人保健健康増進等事業)を受けて実施するものです。 1 企画:認定介護福祉士(仮称)の在り方に関する検討会 2 主催:社団法人日本介護福祉士会 3 研修期間:平成24年10月から平成25年8月頃まで(予定) 4 研修場所 @ 読売理工医療福祉専門学校(東京都港区芝5-26-16) A 東洋大学朝霞キャンパス(埼玉県朝霞市岡48-1) 5 受講者要件 次のすべての要件を満たすことを条件とします。 〔実務経験に係る事項〕 @ 介護福祉士資格取得後の実務経験が5〜10年である者 A 次のア、イいずれかである者 ア.介護チームのリーダーとしての実務経験のある者(例;ユニットリーダー、サービス提供責任者等)であって、現在、リーダーへの指導を行う立場にある者(例;フロア主任や小規模拠点のリーダー、サービス提供責任者のリーダー等) イ.今後、アの役割につくことが期待され、法人が推薦する者 B 居宅系・居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験のある者が望ましい 〔実務経験以外の事項〕 C 研修の課題の一環として、施設・事業所の担当フロア等においてサービス改善等に取り組むことを所属法人が認める者 併せてヒアリング調査やアンケート調査により、受講者個人に対する自己評価を行うとともに、施設長など勤務評定能力を有する上司や他職種等からの評価を行うことを所属法人が認める者 D モデル研修のすべてに継続して参加できる見込みであると所属法人が認める者 |
日程 | 科目 | 講師 | |
第1回 | 10/13(土) | 認定介護福祉士に必要な介護実践の考え方 | 筒井澄栄氏 (国立障害者リハビリテーションセンター研究所障害福祉研究部心理実験研究室長) |
10/14(日) | チーム運営の理解と職種間連携 | 藤井賢一郎氏 (日本社会事業大学専門職大学院准教授) |
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第2回 | 10/27(土) | 生活支援のための運動学 | 石井慎一郎氏 (神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部リハビリテーション学科准教授) 村上貴史氏・長谷川由理氏 (汐田総合病院リハビリテーション科理学療法士) |
10/28(日) | 生活支援のためのリハビリテーションの知識・技術 | 筒井澄栄氏 (国立障害者リハビリテーション研究所障害福祉研究部心理実験研究室長) 廣瀬圭子氏 (目白大学人間学部人間福祉学科助教) |
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第3回 | 11/17(土) | 移動(移乗を含む)の自立支援の実践 | 廣瀬圭子氏 (目白大学人間学部人間福祉学科助教) |
11/18(日) | |||
第4回 | 12/15(土) | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携 | 上野秀樹氏 (社会福祉法人ロザリオの聖母会海上寮療養所副院長) 柴山志穂美氏 (杏林大学保健学部看護学科看護養護教育学専攻講師) 津野陽子氏 (東邦大学看護学部地域看護学研究室助教) |
12/16(日) | |||
第5回 | 1/5(土) | 心理・社会的支援の知識・技術 | 香山明美氏(社団法人日本作業療法士協会常務理事) |
1/6(日) | 福祉用具のフィッテング及びシーティングの技術 | 山崎泰広氏(株式会社アクセスインターナショナル代表取締役) 繁成剛氏(東洋大学ライフデザイン学部教授) |
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第6回 | 2/2(土) | 総合的な介護計画作成の演習 | 本名靖氏(東洋大学ライフデザイン学部教授) |
2/3(日) | 応用的生活支援の展開と指導、介護実践の指導法 | 小平めぐみ氏(国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻助教) 杉本浩司氏(社会福祉法人武尊会事業調査部長/特別養護老人ホーム伊興園施設長) |
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第7回 | 2/16(土)17(日) | 事例を用いた演習 | 内田千惠子氏(社団法人日本介護福祉士会副会長) 小平めぐみ氏(国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻助教) 柴山志穂美氏(杏林大学保健学部看護学科看護養護教育学専攻講師) 杉本浩司氏(社会福祉法人武尊会事業調査部長/特別養護老人ホーム伊興園施設長) 中西正人氏(植草学園短期大学福祉学科講師) 本名靖氏(東洋大学ライフデザイン学部教授) |
第8回 | 3/16(土)17(日) |
日程 | 時間 | カリキュラム | 備考 |
1日目 | 10:00〜12:00 (2時間) |
開講・オリエンテーション 講義・演習 |
研修全体の狙いと内容説明 導入・講義 修了者による発表 |
昼食・休憩 | |||
13:00〜17:00 (4時間) |
講義・演習 振り返りレポート |
グループ討議・演習 |
日程 | 時間 | カリキュラム | 備考 |
2日目 | 9:00〜12:00 (3時間) |
講義・演習 | 個人演習・グループ討議 |
昼食・休憩 | |||
13:00〜17:00 (4時間) |
演習 振り返りレポート |
事例検討グループワーク |
日程 | 時間 | カリキュラム | 備考 |
3日目 | 10:00〜12:00 (2時間) |
講義・演習 | 事例検討グループワーク (受講生提出事例の検討) |
昼食・休憩 | |||
13:00〜17:00 (4時間) |
講義・演習振り返 りレポート |
事例検討グループワーク |
日程 | 時間 | カリキュラム | 備考 |
4日目 | 9:00〜12:00 (3時間) |
講義・演習 | 演習・グループ検討 |
昼食・休憩 | |||
13:00〜17:00 (4時間) |
講義・演習 受講生提出事例の検討 振り返りレポート |
事例検討グループワーク |
日程 | 時間 | カリキュラム | 備考 |
5日目 | 9:00〜12:00 (3時間) |
開講・演習 受講生提出事例の検討 |
総合演習・個人演習 |
昼食・休憩 | |||
13:00〜17:00 (4時間) |
講義 振り返りレポート |
研修の振り返り |
認定介護福祉士養成研修対象者の条件のひとつに《今後、介護チームのリーダーや指導者としての役割につくことが期待されている者》という項目があることからも、(一般)介護福祉士の上級資格に位置付けられているとする見方もできますが、国家資格である(一般)介護福祉士に対し、専門(認定)介護福祉士は国家資格ではない(つまり、介護福祉士会による認定資格)点に注意が必要です。
確かに業界によっては公的資格や民間資格の方が有利に働くケースも見られますが、専門介護福祉士の資格を認めている介護福祉士会は組織自体が任意の団体なので、必ずしもこの上級資格の地位が高いとは言い難い面があります。
また、似たような上級資格はケアマネージャーにも見られますが(主任ケアマネなど)、その待遇は必ずしも優遇されているわけではないようです。
※ 地域包括支援センターや特定事業所加算を取得する一部の事業所にあっては、主任ケアマネの配置が義務付けられているので、なければないで困る資格ですが、資格取得者の大半は、これといって特に特別な恩恵を受けるに至っていないというのが現状のようです。
先に示した養成研修開催要項にも明記されているように、専門介護福祉士は創設されてからまだ日が浅く未だモデル的事業≠ニのことなので、その将来性は不透明な部分が多く見られます。
そのため、介護福祉士の資格を取得し、介護の現場で長く働きたいと思っている人は、この上級資格にあたる専門介護福祉士の今後の動向に注目しておきましょう。