介護福祉士の資格を取得するには、まず、筆記試験に合格しなければなりません。
※ 以前は国家試験を受けなくても介護福祉士の資格が取得できるルートもありましたが、平成27年度(第28回)以降は養成施設卒業者も国家試験が必要となります。
そのため、試験の難易度が気になるところですが、ここでは介護福祉士筆記試験の合格点にスポットをあて、その推移状況から見た筆記試験の難易度について少し分析してみましょう。
(財)社会福祉振興・試験センターの公式HPによると、介護福祉士筆記試験の合格基準は次のように定められています。
次に示す2条件を満たした者。 【ア】 総得点(125点)の6割程度の正解率を基準(問題の難易度によって若干の補正あり)。 【イ】 アを満たした者のうち、以下の「11科目群」すべてにおいて得点があった者。(配点は1問1点形式の125点満点)
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つまり、介護福祉士筆記試験の合格基準は〝総得点の6割程度〟ということなので、この合格ラインに従えば、75点以上の得点を確実にとることが、ひとつの目安(目標)となりそうです。
ところが、センターが公表している介護福祉士筆記試験の合格基準には〝問題の難易度によって若干の補正あり〟と明記されています。
つまり、前もって明確な合格点(合格ライン)が決められているわけではないということです。
参考までに、第16回以降の介護福祉士筆記試験の合格点を振り返ってみると、数年前までは合格基準である72点(第29回以降は75点)を下回る方が珍しかったようです。
※ ただし、介護福祉士試験は出題者のミスによる不適切問題もあるので、その分、合格点が押し上げられているのも事実…(不適切問題は基本的に全員正解扱いされます)。
\ | 合格点 (120点満点) |
得点率 | 不適切 問題個所 |
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2004年 第16回 |
84点 | ⁺10点 | 70.0% | 2箇所 【問22/問111】 |
2005年 第17回 |
82点 | -2点 | 68.3% | ----- |
2006年 第18回 |
73点 | -9点 | 60.8% | ----- |
2007年 第19回 |
77点 | ⁺4点 | 64.2% | ----- |
2008年 第20回 |
82点 | ⁺5点 | 68.3% | 3箇所 【問2/問14/問73】 |
2009年 第21回 |
76点 | -6点 | 63.3% | 1箇所 【問80】 |
2010年 第22回 |
75点 | -1点 | 62.5% | ----- |
2011年 第23回 |
71点 | -4点 | 59.2% | ----- |
2012年 第24回 |
75点 | ⁺4点 | 62.5% | ----- |
2013年 第25回 |
69点 | -6点 | 57.5% | ----- |
2014年 第26回 |
68点 | -1点 | 56.7% | ----- |
2015年 第27回 |
68点 | ±0点 | 56.7% | ----- |
2016年 第28回 |
71点 | ⁺3点 | 59.2% | ----- |
※ 筆記試験の合格点は第15回試験より公表されるようになりました。
近年は合格基準点が低くなる傾向も見てとれますが、今後どのような動きを見せるかは定かではありません。
したがって、ここ数年は合格ラインの下降傾向が見られるものの、介護福祉士筆記試験に関しては、総得点の7割(合格点に置き換えると84点)近い得点を取ることができれば、ひとまず安心とみることができそうです。
参考までに、介護福祉士試験の合格率推移状況を右記表にまとめてみましたが、試験開始当初を除くと、例年50%前後(平成24年度には60%台に突入)で推移しており、一般的に公的資格や民間資格に比べ難易度が高いと言われている国家試験の中では、高水準で推移していることが見てとれます。
また、介護福祉士筆記試験は下記のような特徴が見られるため、市販テキストや問題集を使用した独学でも十分合格が狙える試験であるとみてよいでしょう。
五肢択一のマークシート方式で行われる! 本試験問題は標準レベルの問題が多い! |
しかし、敢えて学習上の問題点を挙げるとしたら、先に示した介護福祉士筆記試験の合格基準にある、先に示した10科目群すべてにおいて得点することが合格条件のひとつとなっている点です。
つまり、0点の科目群がひとつでもあると不合格になってしまうということです。
領域 | 試験科目 | 出題問題数 | 配点 | 合格基準 |
人間と社会 | 人間の尊厳と自立 | 2問 | 各1点 120点満点 |
総得点の 60%程度を基準として 問題の難易度で補正 |
人間関係とコミュニケーション | 2問 | |||
社会の理解 | 12問 | |||
介護 | 介護の基本 | 16問 | ||
コミュニケーション技術 | 8問 | |||
生活支援技術 | 20問 | |||
介護過程 | 8問 | |||
こころと からだのしくみ |
発達と老化の理解 | 8問 | ||
認知症の理解 | 10問 | |||
障害の理解 | 10問 | |||
こころとからだのしくみ | 12問 | |||
総合問題 | 総合問題 | 12問 |
※ 平成24年1月実施分(第24回)より、試験内容が大幅に変更。また、第29回試験から新たに「医療的ケア」の科目が加わり125点満点となります。
そのため、広範な試験範囲を、いかに効率よく学習するかがネックとなってくるので、実務経験によって受験資格を得ているような独学受験者は特に仕事と勉強を両立させながら本試験に臨まなければならないため、極端な不得意科目をなくし、かつバランスのよい効果的な学習法を自分で確立しなければなりません。
したがって、仕事が忙しく思うように勉強時間が割けないといった勉強不足がちな方や、福祉系学校を卒業してから、だいぶブランクがあるといった受験者は、特に本試験で狙われやすい論点を重点的に学習し、短期間で効率よく実力を身に付けていく必要があるので、場合によっては、専門スクール等を利用した勉強スタイルを検討してみるのも一法かもしれません。