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軽度者に対する福祉用具貸与の取扱についてtop
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2000年にスタートした介護保険制度によって、新たに始まった介護サービスのひとつが〝福祉用具貸与〟です。

この福祉用具貸与サービスの導入により、要介護認定を受けた者は、下記表に示す特定の福祉用具のレンタルにかかる費用の9割が給付されるため、費用面での負担が軽減(つまり、実際に福祉用具貸与にかかった費用の1割が利用者負担となる)されることになります。

そのため、介護保険制度の導入以降、この福祉用具貸与サービスによる給付額が増加した結果、介護保険財政を圧迫する一要因になっているのではないかといった声が上がり始めました。

そもそも、この福祉用具貸与サービスとは、単に「便利だから…」「費用が安く済むから…」といった目的のために導入されたわけではなく、あくまで個々の身体の状態に応じて福祉用具を利用することが相応しいと判断された者に対して用意された制度です。

そこで、このままでは将来にわたり制度を維持することが難しいと考えた政府は、このような趣旨を徹底する意味でも、平成18年、軽度者に対する福祉用具貸与の取扱方法の見直しを行いました。
保険給付の対象となる福祉用具
チェック車いす
チェック車いす付属品
チェック特殊寝台
チェック特殊寝台付属品
チェック床ずれ防止用具
チェック体位変換器
チェック自動排泄処理装置
チェック手すり
チェックスロープ
チェック歩行器
チェック歩行補助杖
チェック認知症老人徘徊感知機器
チェック移動用リフト(つり具部分を除く)
軽度者とは…
平成18年に軽度者に対する福祉用具貸与の取扱の見直しが行われましたが、ここでいう〝軽度者〟とは、介護保険制度で定めた要介護・要支援状態区分のうち、《要支援1・2》と《要介護1》に該当する対象者のことです。
要支援・要介護状態区分イメージ
つまり、先にも説明したとおり、福祉用具貸与サービスは、あくまで身体の状態に応じて福祉用具を利用することが相応しいと判断された者に対して用意されたサービスなので、要支援1・2、要介護1と認定された被保険者は、その状態像からみて、これまで支給対象となっていた一部の福祉用具の使用に関しては、通常、想定しにくいと見なされたわけです。




軽度者にかかわる変更内容(平成18年度)

軽度者に対する福祉用具貸与の取扱が、いったいどのように変更されたのか気になるところですが、福祉用具貸与サービスの対象となっていた特定福祉用具の中で、原則として保険給付が行われなくなった種目は下記13種目のうち8種目です。
保険給付対象の有無
種目 軽度者(要支援1・2 or 要介護1) 要介護2~5
車いす 原則、×
車いす付属品 原則、×
特殊寝台 原則、×
特殊寝台付属品 原則、×
床ずれ防止用具 原則、×
体位変換器 原則、×
認知症老人徘徊感知機器 原則、×
移動用リフト(つり具部分除く) 原則、×
自動排泄処理装置 原則、○
※ 排便機能を有するものは要介護4・5のみ
手すり
スロープ
歩行器
歩行補助杖
ただし、ひと口に〝軽度者〟といっても、皆が皆、一様に同じような状態にあるわけではありません。

何度も繰り返しますが、このサービスは身体の状態に応じて福祉用具を利用することが相応しいと判断された者のために設けられた制度なので、個々の身体状況に照らし、一定の条件に当てはまる者は、たとえ軽度者であっても、保険給付を受けることが望ましいとして、例外給付の対象となっています。

したがって、被保険者の状態によっては、たとえ軽度者であっても、保険給付の対象になるケースが出てくるのでダメもとで相談はしてみるべきでしょう。

※ ただし、必要に応じて、随時、その必要性の判断の見直しが行われます。
表1:例外給付の対象
車いす及び車いす付属品 ① 日常的に歩行が困難な者
② 日常生活範囲において移動の支援が特に必要と認められる者
特殊寝台及び特殊寝台付属品 ① 日常的に起き上がりが困難な者
② 日常的に寝返りが困難な者
床ずれ防止用具及び体位変換器 日常的に寝返りが困難な者
認知症老人徘徊感知器 ① 意思の伝達、介護者への反応、記憶・理解のいずれかに支障がある者
② 移動において全介助を必要としない者
移動用リフト ① 日常的に立ち上がりが困難な者
② 移乗が一部介助又は全介助を必要とする者
③ 生活環境において段差の解消が必要と認められる者
自動排泄処理装置
(尿のみを自動的に吸引する機能のものを除く)
① 排便が全介助を必要とする人
② 移乗が全介助を必要とする人


新たに追加された例外給付対象(平成19年度)

平成19年、軽度者に対する福祉用具貸与の取扱方法が、さらに見直されることになり、例外給付の対象ケースが新たに追加されました。

この見直しにより、【表1】に該当しない軽度者であっても、保険給付の対象となる可能性が出てくるので、福祉用具貸与を検討されている方は、一度ケアマネジャーなどに相談してみてはいかがでしょうか。

※ なお、【表1】【表2】に該当しない方でも、福祉用具を利用することが相応しい状態であることが ① 医師の判断 ② ケアマネジメントの判断により確認できた場合は、例外的に保険給付が認められます。
表2:追加された例外給付対象ケース
チェック疾病その他の原因により、状態が変動しやすく、日によって又は時間帯によって、頻繁に、表1に定める状態像に該当する者(例:パーキンソン病の治療薬によるON・OFF現象など)

チェック疾病その他の原因により、状態が急速に悪化し、短期間のうちに、頻繁に表1に定める状態像に該当することが確実に見込まれる者(例:がん末期の急速な状態悪化など)

チェック疾病その他の原因により、身体への重大な危険性又は症状の重篤化の回避等医学的判断から、表1に定める状態像に該当すると判断できる者(例:ぜんそく発作等による呼吸不全、心疾患による心不全、嚥下障害による誤嚥性肺炎の回避など)