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認知症と診断された患者に現れる日常生活に支障をきたすような症状は〝物忘れ〟だけとは限りません。

認知症の症状は大きく2つ《中核症状》と《周辺症状》とに分けることができますが、病気の進行程度や原因疾患によって、患者に現れる症状は人それぞれ異なってきます。

認知症患者の行動したがって、どんな認知症患者にも通用するバイブル的な認知症対応マニュアルというものは存在しませんが、もし仮に自分の両親(祖父母)が認知症と診断され、日々、様々な問題行動を起こし始めた場合、家族や周囲の人は、どのように向き合えばよいのか、最低限の知識を備えておくことは大切です。

そこで、どんな患者さんに対しても適切な対処ができる認知症対応マニュアルとまではいきませんが、比較的、多くの認知症患者にみられる事例を基に、こんなときはどうするのか? どのような対応法があるのか !? を、参考までにいくつか紹介しておきましょう。

認知症対応マニュアル:こんなときどうする?【ケース1:異食】

異食とは、食べられるものとそうでないものとの区別がつかないため、身の回りにある物を何でもかんでも口の中に放り込んでしまう行為のことです。

認知症患者が異食行為に及んでしまう背景には、記憶障害や判断力の低下、あるいは失見当識(日付や日時、自分のいる場所や置かれている状態などがわからなくなってしまうこと)、満腹中枢の障害や味覚の低下などが深く関係しているのではないかと考えられていますが、この異食は、どちらかというと初期よりも、中等度以降の認知症患者に見られる問題行動のようです。
対処法(接し方)
認知、判断力の低下により食べるものかどうかの区別がつかない状態にある以上、異食行為のたびに「これは食べ物ではありません!」と注意したところで、認知症患者の異食が止まることはありません。

したがって、事後対策よりも事前予防策を講じておくべき問題行動のひとつですが、万が一、食べ物でないものを口にしてしまった場合は、軽いおやつなどと交換してあげると、口にしている物を吐き出してくれるケースも少なくないようです。



日頃から気を付けておくべき対応策
チェックごみ箱はフタ付きのものを使用し、認知症患者の目にゴミが触れないようにしておく!
チェック特に口にすると危険な生活用品や危険物は、高い場所や鍵付きの引き出しにしまっておく!

認知症対応マニュアル:こんなときどうする?【ケース2:人物誤認】

重度認知症患者の中には、長年連れ添った妻や夫、あるいは同居している家族の顔まで忘れてしまうケースもありますが、認知症患者の人物誤認は、程度の差こそあれ、比較的、高い確率(3人に1人程度)で起こる症状のひとつだと言われています。

認知症を発症すると記憶することが苦手で、特に初期には新しい事ほど覚えることが困難になりますが、さらに記憶障害が進んでいくと、古い記憶までもが徐々に失われていくため、顔馴染みであったはずの近隣住人の顔などを忘れてしまうことも珍しくはないようです。
対処法(接し方)
家族や知人を他の人と間違えている認知症患者に対し「違うでしょ!」「何度言ったらわかってくれるの!」「しっかりしてよ!」といったような否定的な言葉を投げつけると、言われた方はかえって混乱してしまうことが多いようです。

したがって、認知症患者の人物誤認に対しては、まず第一に否定しないということです。

認知症患者の中には、目の前にいる相手の名前は思い出せなくても、向こうが自分のことをよく知っている人物だということは理解している方も少なくないので、怒鳴って否定したり、無理に納得させようとすると、混乱してしまった患者が興奮し、かえって口論になってしまうことも・・・

長年連れ添った夫(あるいは妻)や家族に向かって「どちらさまですか?」と言われた時のショックは、他人には計り知れないものがあるかと思われますが、認知症は病気であり、悪意をもってそのような言動を起こしているわけではありません。

接し方のポイントそのため、人物誤認に対しては否定せず、その場限り別人になりきった気持ちで接した方がよいケースも少なくないようです。

なお、人物誤認が目立つようになると、本人に悪気はなくても近隣住人との関係がギクシャクしてしまうような場合もあるので、特に顔馴染みの近隣者には、前もって一言伝え根回ししておくのもよさそうです。
『 認知症のせいで、○○さんに失礼なことを言ってしまうことがあるかもしれませんが、その時は聞き流してください 』


認知症対応マニュアル :こんなときどうする?【ケース3:(被害)妄想】

認知症患者が抱く妄想にはいくつか種類がありますが、比較的、多いのが〝物盗られ妄想〟です。

典型的な例としては、財布や通帳などの貴重品を自分でどこかにしまい忘れてしまったにも関わらず、しまったという行為自体を忘れてしまうため、そのことをキッカケに被害妄想が強く働き「誰かに盗まれた!」と他人のせいにしてしまう症状で、比較的、初期段階から出やすいようです。
患者が抱きやすい妄想
物盗られ妄想 他人が自分のものを勝手に盗った(隠した)と思い込んでしまうこと
嫉妬妄想 夫(妻)が浮気しているのではないかと疑ったり、息子が知らない女(嫁)にとられたと勝手に思い込んでしまうこと
不実妄想 周囲の人が自分を騙していると誤解してしまうこと
自分がしまい忘れたにもかかわらず、他人を疑ってしまったという経験をお持ちの方は、認知症でなくてもいるかと思われますが、認知症患者の中には、この〝疑う〟という感情がより表に強く出てしまう方も少なくないようです。

そのため、特に患者さんと同居している場合は、身近な人が疑いの対象となってしまいやすいのですが、「私は知りません!」「人のせいにしないでください!」とか「自分でしまったんじゃないですか!」と反発すると、かえって口論となってしまったり、場合によっては、相手が興奮して刃物を持ち出してくるなどの状況にまで悪化してしまうこともあるので注意が必要です。
対処法(接し方)
基本的に、この手の突発的な心理的被害妄想は薬での治療が難しく、その場その場で対処していなかなければなりません。

したがって、疑われた本人の精神的負担は決して小さくはありませんが、最悪の状況を回避する意味でも、相手の意見に反発しない方が結果的にはよい方向に向かうようです。

しかし、「私が盗みました」というのもおかしな話なので、相手の気をそらす方向に仕向けるのがポイントです。
『 とりあえずお茶を飲んでから、一緒に探しましょう 』
なお、一緒に探した際、あなたが発見すると「ほらっ!やっぱりあなたが隠してた!」と疑いの目で見られてしまう場合もあるので、あなたがお目当てのものを見つけた場合は、それとなく患者さん自身が発見したように仕向けるのがコツです。