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頭部外傷性痴呆top
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一度は正常に発達した脳の機能(記憶力や認識力、判断力、言語能力、注意力...etc)が、社会生活に支障をきたすほど、著しく低下してしまった状態のことを〝痴呆症〟と呼びます。

痴呆症の原因疾患※補足:痴呆という用語は漢字のもつ意味が相応しくない(差別的)として、現在は認知症という呼び方が一般的です。

したがって《 アルツハイマー病 = 痴呆症 》というわけではなく、アルツハイマー病とは、あくまで痴呆症を引き起こす1つのタイプ(原因疾患)ということになります。

現在、痴呆症を引き起こすと考えられている原因疾患は、分かっているだけでも50種類を超えますが、実は〝アルツハイマー型痴呆症〟と〝脳血管性痴呆症〟そして〝レビー小体型痴呆症〟の3タイプだけで、痴呆患者全体の約9割を占めているというのが現状です。

つまり、大半の痴呆患者は、この3タイプ(アルツハイマー型痴呆症と脳血管性痴呆症の混合型も含む)のうち、いずれかに属するわけです。

したがって、患者数という観点からみると、頭部外傷性痴呆症患者は、それほど多くありません(全体の約2~3%ともいわれている)。

頭部外傷性痴呆とは…

頭部外傷性痴呆とは、文字どおり、頭部に外部から何らかの損傷を受け、脳の一部の機能が低下したために痴呆症の症状(記憶障害からくる物忘れなど)が現れ始めた場合に使われる専門用語です。

外部から受ける何らかの損傷とは、例えば転んだ拍子に頭を強打したなどがいい例ですが、他にも下記に示すような例が挙げられます。

頭部外傷性痴呆の原因特に高齢者は加齢とともに視野が狭くなったり、反射神経や運動機能が低下してくることから、バランスも悪くなり転倒しやすい状況にあるため、頭部外傷性痴呆患者の数自体は少ないものの、特に注意が必要だと言われています。

しかし、この外傷性疾患をキッカケとした痴呆症は、その原因を取り除いてやることで症状が改善(あるいは抑制)するケースも多いので、症状が悪化しないうちに早めに専門医に相談することが大切です。




慢性硬膜下血腫とは…

頭部の外傷性疾患が引き金となって痴呆症状が現れることを頭部外傷性痴呆と呼んでいますが、その代表的な病気のひとつが〝慢性硬膜下血腫〟です。

慢性硬膜下血腫とは、簡単に説明すると〝血腫(血液が1ヶ所で固まり、こぶのように腫れあがった状態のもの)が脳を圧迫する病気〟のことですが、もう少し説明を補足しておきましょう。

皆さんもご存知のように、脳は頭蓋骨に守られていますが、実は頭蓋骨と脳の間には、さらに3層の膜があります。
慢性硬膜下血腫の症状
チェック頭痛
チェック歩行障害(前傾歩行 / 足を引きずる …など)
チェック片麻痺
チェック尿失禁 …etc
脳の構造
この脳膜は外側から《 硬膜 → クモ膜 → 軟膜 》の順に3層構造となっており、外部からの衝撃を和らげる役割も担っているのですが、例えば転んだ拍子に頭を打った際、運が悪いと硬膜の内側(つまり、硬膜とクモ膜の間)に小出血が生じることもあるのです。

この出血は、自然に吸収されてしまうこともありますが、心筋梗塞者向けの薬品等を定期的に服用している方などは、出血した血液が固まらないこともあり、徐々に大きくなってしまうことがあるようです。

すると、この血腫がやがて脳を圧迫し始めるため、稀に痴呆症患者に見られる物忘れなどの症状が目立ち始める…という仕組みです。

この病気による痴呆症状は、脳を圧迫している血腫を除り除いてやることで改善効果が期待できるので、頭部外傷性痴呆を引き起こしている原因によっては、アルツハイマー型痴呆症や脳血管性痴呆症とは異なり、痴呆症状を治すことができるケースも少なくないといわれています。
アルツハイマー病は高齢者だけの病気ではない !?

アルツハイマー病は〝高齢者の病気〟と位置付けられてきた節がありますが、渡辺謙主演の「明日の記憶」や韓国映画「私の頭の中の消しゴム」といった映画がヒットした影響もあってか、最近では、まだまだ働き盛りの若い世代でもかかる〝若年性アルツハイマー〟と呼ばれる病名があるということも少しずつ理解され始めてきました。

この若年性アルツハイマー病の厄介な点は、患者の年齢がまだ若いゆえに、自覚症状が少なく病気の発見が遅れがちなのにもかかわらず、初期症状が現れてからの病気の進行速度が早いことです。