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まずは知っておきたい!認知症患者との接し方【基礎知識】

認知症は加齢とともに発症率が高まる傾向にあります。

そのため、国民全体の寿命が延び、世界でもトップレベルにある長寿国日本においては、既に他人事ではなく、いずれは認知症患者と向き合わなければならない方も、これから徐々に増えてくることが予想されます。

認知症患者の症状イメージ一般的に認知症は〝物忘れ〟が激しい症状と認識されているようですが、実は記憶障害による物忘れは、多くの認知症患者に見られる中核症状のひとつに過ぎず、他にも様々は周辺症状が現れます。

つまり、個々の患者によって接し方は異なってくるため、介護のプロと呼ばれている方々の間でも認知症患者との接し方に苦労されている方は意外と多いようです。

数年前に話題となった映画(『明日の記憶』『私の頭の中の消しゴム』なと)の影響もあってか、認知症という病気の存在が世間に広く知られるようになりましたが、この病気を本当に理解している方はまだまだ少ないのが現状です。

認知症は単なる老化による物忘れではないので、患者との接し方には少しコツがいりますが、彼らと向き合う前に特に心得ておきたいポイントが下記に示す5点です。
認知症患者と向き合う際の心得5ヶ条
チェック話題をそらす!
チェックむやみやたらに怒らない(怒鳴りつけない)!
チェック無理に説得しようとしない!
チェックこんなことは出来て当たり前という常識はとりあえずおいておく!
チェック問題行動は故意ではなく病気のせいだと理解する!



こんなときどうする !? 認知症患者との接し方【症状別対応事例】

認知症患者に見られる典型的な中核症状のひとつに記憶障害からくる〝物忘れ〟があります。

認知症患者との接し方人は年を取ると身体機能が落ちてくるように、記憶力も徐々に低下していきますが、老化による生理的な物忘れは部分的な物忘れにとどまり、何かヒントやキッカケさえあれば思い出すのが通常です。

ところが、認知症患者の物忘れは過去に経験したこと自体を忘れてしまうのです。

そのため、病気の進行状態にもよりますが、次に示すような言動や行動をとる患者さんも少なくありません。
ケース1:何度も食事を催促する
認知症初期から現れやすい症状のひとつが食事の催促です。

先にも説明したとおり、食べたという行為そのものを忘れてしまっていたり、脳にある満腹中枢が侵されていることで満腹感を感じなくなった結果、まるで空腹であるかのような気がしてしまうことが、このような行動を起こさせているのではないかと考えられています。
接し方(対処法)

認知症患者は食事をしたこと自体が記憶にないため、「さっき食べたばかりでしょう!」と頭ごなしに怒鳴りつけても相手は納得できません。

このような接し方をすると、逆に「この人は食事もさせてくれない…」と、疑いの目を向けられ、その不満を周囲に告げるような行為に走る恐れもあります。

したがって、相手の気を食事の話題からそらすことがポイントです。

例】「○○時になったら食事にしましょう」「今作っているのでお茶でも飲みながら少し待っていて下さい」...など

なお、どうしても今すぐ何か食べたい!と言って納得しない場合は、カロリーの低い食べ物や飴・ガム(ただし、喉に詰まらせる危険がある患者には×)といったある程度長持ちのするおやつを与え、欲求不満を和らげてあげるのも一法です。
ケース2:夕暮れ(夕方)症候群
住み慣れた自宅にいるのに、夕暮れ時になると家に帰りたい衝動に駆られてしまう患者さんも少なくないようです。

この問題行動は、記憶障害や見当識障害によるものが大きいと言われていますが、今現在、自分がいる場所がよくわからないために、ここは自宅ではない(会社や客人の家など)と感じてしまう時にとってしまう行為のようです。

なお、夕暮れ症候群は放っておくと徘徊の原因にもなるので、介護する側にとっては見逃せない行動のひとつとされています。
接し方(対処法)

基本的にこの手の問題行動を示す患者との接し方は〝気をそらす〟ことです。

患者さんが、ここは自宅ではないと感じている(「家に帰って夕飯の支度をしなければ…」「そろそろ家に帰ることにします」などの言動)以上、何を行っても相手は納得しないので、無理に説得(外出を止めさせる)しようとすると、かえって口論になることも考えられます。

したがって、客人としてのよそよそしさや立ち振る舞いが見られるようなら、お客としてもてなす接し方が功を奏すこともあります。

例】「お茶を飲んでから帰ってはいかかですか?」「一泊していったら主人(妻)も喜びます」「うちの子供が○○さんとお話ししたがっていたので、もう少しいてくれませんか」...など

どうしても帰りたいと言って聞かないような場合は、無理に引きとめるのではなく、「そこまで送ります」と行って一度玄関を出たり、家の周りをグルッと一緒に散歩すると落ちつく方もいるようです。
ケース3:火の不始末
命にもかかわる問題行動のひとつが火の不始末です。

ガスやストーブ、煙草の火の消し忘れなどは、認知症の症状がみられる患者さんにいくら注意しても繰り返してしまうため、叱ったところで効果はなく、こればかりは接し方と言うよりも周囲の者が予防に努めることが大切です。
接し方(対処法)

チェックライター・マッチ類はその都度渡し、それ以外の時は目のつかない場所にしまう!
チェックガスを使わない時は元栓を閉めておく!
チェック石油ストーブなどの火を使う暖房器具は避ける(電気ストーブ・カーペット類を使う)!
チェック火災報知機、ガス漏れ警報器を備え付ける!
ケース4:迷子(徘徊)
認知症の方が家を一人で外出したきり、戻って来れなくなるのは見当識障害が影響していると考えられます。

見当識障害とは、簡単に説明すると日付や時間、場所などの基本的状況が正しく理解できていないことで、気が付くと、今自分がいる場所がどこなのかが分からなくなってしまうのです。

そのため、仕舞には焦りと不安からパニックを起こし、とにかく歩き回ってしまうといった行動に出てしまいます。
接し方(対処法)

徘徊されては困るからと外出を固く禁止したり、玄関や個室に鍵をかけて閉じ込めてしまいたいといった気持も分かならくもありませんが、このような接し方は認知症患者さんの不満をかえって募らせるだけで、他の問題行動を引き起こす引き金にもなりかねないので注意が必要です。

認知症の方の徘徊は数ある問題行動の中でも特にやっかいな行為なので、頻繁に続くようであれば、専門家に相談したり、場合によっては施設利用も選択肢の一つとして検討してみるべき時期にきているのかもしれません。

例】外出したことが分かるように、玄関ドアに音の鳴るグッズをぶら下げておく。時間を決めて定期的に散歩に連れ出し、日頃から外出したいという不満感を少しでも和らげておく。迷子に備えて、住所・名前・連絡先を記した迷子札(あるいはペンダントとして首からかけておく)を衣類や靴に縫いつけておく。

なお、徘徊する高齢者を探すためのサービス[右記、豆知識参考]を提供している地域もあるので、状況によってこれらのシステムを活用してみるのもよいでしょう。






  認知症高齢者の 年齢階層別出現率
65~69歳 1.5%
70~74歳 3.0%
(+1.5増)
75~79歳 7.1%
(+4.1増)
80~84歳 14.6%
(+7.5増)
85歳以上 27.3%
(+12.7増)

※ 参考 … 平成4年2月老計第29号 老健14号「老人保健福祉計画策定に当たっての痴呆老人の把握方法等について」






( 関連映画 )

日本のTVドラマ「Pure Soul~君が僕を忘れても(主演:永作博美/緒形直人)」を基にした韓国映画。どちらかと言うと若者向けに作られた泣けるラブストーリー。



運命的な出会いをした若い男女が身分の差を越えて結婚したものの、妻が若年性アルツハイマーを発症したことで2人の生活が一変。愛する夫のことさえも忘れてしまうかもしれない自分に戸惑いショックを受ける妻と、その妻を一途に愛し支え続ける夫が、より深い絆を深めていく…




介護:豆知識

徘徊高齢者対策向け公共サービスってなに !?
徘徊高齢者位置情報システム
あらかじめ所持している端末機を検索して、徘徊高齢者の迅速な安全確保をするシステム。介護する家族の介護負担を軽減することも目的のひとつであり、認知症高齢者の徘徊に困っている家族を対象としたサービスでもある。サービスの有無や詳細については、各市区町村の相談窓口(高齢者支援課など)で受け付けている。
徘徊高齢者SOSネットワーク
地域の関係機関(自治体、警察、消防、医療など)が連携して、徘徊する高齢者等を早期に発見・保護するためのシステム。連絡先は主に最寄りの交番(警察署)や市区町村の相談窓口(高齢者支援課など)、地域包括センター等で、徘徊の心配がある方は前もって届け出ておくことも可能。

コーヒータイム