ひとくちに〝認知症〟といっても、その原因疾患によって、患者に現れる症状や治療法は異なってきます。a 前頭側頭型認知症は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症などに比べると患者数が圧倒的に少なく、医師の中でも、この病気に精通している者は限られてくるため、その症状から他の精神病(うつ病や総合失調症など)と診断されてしまい、適切な治療が行われていないケースも多いのではないかと懸念されている脳疾患のひとつです。 そこで、前頭側頭型認知症とは、いったいどんな病気なのか・・・現時点において報告されている病気の特徴についてまとめておきます。 前頭側頭型認知症とは、簡単に言ってしまえば、主に大脳の前頭葉と側頭葉の委縮が目立つ脳疾患のことですが、患者の症状によっては「進行性非流暢性失語症」と「意味性認知症」を含めた3タイプに分類することができることから、これらをひっくるめて〝前頭側頭葉変性症〟と呼ぶこともあるようです。
そのため、ある特定の異常物質(ピック球やTDP-43)が脳の神経細胞内に蓄積するといった特徴については確認されていますが、病気の解明という点についてはいまだ不十分と言わざるをえません。
前頭側頭型認知症は、症状が進行すると脳の委縮が見られるという点においてはアルツハイマー型認知症と同じですが、アルツハイマー型認知症が、主に頭頂葉や側頭葉(内側)の委縮が顕著なのに対し、前頭側頭型認知症患者の脳は、前頭葉や側頭葉の委縮が目立つことから、脳の構造上の変化を知るための頭部CT検査やMRI検査を受けることで、その違いを見分けることができます。 ただし、この検査は脳の変化(委縮)があまり見られない初期段階の患者では判断のつかないこともあるので、早期発見や、より詳しい診断を下すためには、脳の機能変化を知るための〝SPECT検査〟や〝PET検査〟などが有効なのではないかという意見もあるようです。 先にも述べたとおり、前頭側頭型認知症についての研究は残念ながらあまり進んでおらず、アルツハイマー型認知症などの他の認知症に比べると、症状の改善や進行を遅らせることのできる有効な手立て(治療法や治療薬)はいまだ確立されていません。 また、この病気をよく理解していない医師の下では、アルツハイマー型認知症患者に有効な治療薬アリセプトを処方される方もいるようですが、前頭側頭型認知症患者にアリセプトは有効な治療薬とはなりえない(かえって興奮状態を招いてしまう等のリスクも考えられるそうです)といった報告もみられるので注意が必要です。 そのため、効果的な治療法がない以上、前頭側頭型認知症患者に対しては、個々の患者の症状に合わせて、薬物療法で症状を和らげながら介護中心のケアを続けていくしかないのというのが現状であり、新薬の開発が待たれます。 病名にも含まれているように、前頭側頭型認知症患者の脳は、特に《前頭葉》と《側頭葉》の委縮が顕著であることが特徴のひとつです。 前頭葉【下図参考】とは、文字通り大脳の前方に位置する脳で、脳全体の約4割を占めていますが、この前頭葉では、主に意思や思考、感情をコントロールするとともに、人が行動を起こすという行為と深いかかわりがあります。 つまり、前頭葉の働きがあるおかげで、人は感情を抑制し理性的に行動することができるのです。 一方、側頭葉とは大脳の両側面に位置する脳で、聴覚や味覚をはじめ、記憶や判断力、感情等をコントロールする重要な働きを担っています。 そのため、側頭葉に異常(障害)が起こると、記憶障害などを引き起こします。
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