認知症とは、ある特定の脳疾患が原因で起こる様々な症状のことを総称した医学用語ですが、原因別にみると「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」の3タイプが全体の約8~9割を占めています。 しかし、現在、レビー小体型認知症患者の数は推計50万人(国内)とも言われ、日本ではアルツハイマー型認知症に次いで患者の多い脳疾患として、意外と身近な病気になりつつあるようです。 ところが、このレビー小体型認知症という病名が正式に名付けられてからまだ日が浅いため(1995年)、病気の特徴や治療法をあまりよく理解していない医師の下では、症状が似ているアルツハイマー病やうつ病、あるいはパーキンソン病といった他の病気と誤診してしまうケースも多く、適切な治療が行われていない現状があるとも言われています。 レビー小体型認知症患者の中には、抗精神病薬に対する反応が極めて過敏なケースもあり、誤診により誤った薬物療法が続けられると、かえって症状を悪化(歩行障害や体の硬化を招くことも…)させてしまうことも少なくありません。 また、レビー小体型認知症は、進行し始めると病気の悪化が早いとも指摘されており、気付いた頃には家族だけではとてもじゃないが対応しきれないほど重度の随伴症状を示す患者も多いため、いかに早期に正確な診断を下すことができるかが鍵を握ってくるようです。 ※ 早期発見・早期治療に臨むことで、適切な処置が行えるだけでなく、病気の進行を遅らせることも可能です。 レビー小体型認知症は、脳の神経細胞が減少する変性型の認知症であるという点において〝アルツハイマー型認知症〟と変わりありません。 そのため、この病気の有無を判断する方法のひとつとして、頭部CT検査やMRI検査がありますが、脳は加齢によっても委縮することが判明しているので、初期段階にある認知症患者の脳の委縮が、果たして病気によるものなのか、それとも加齢によるものなのかを区別することが難しいケースも少なくないようです(つまり、脳の委縮と認知症は必ずしも一致しない)。 そのため、レビー小体型認知症の有無を早期判断するためには、脳の構造上の変化を知るための医療機器よりも、脳の機能変化を把握することができるSPECT検査やRET検査が有効だと言われています。
先にレビー小体型のような変性型認知症の有無を判断するには、脳の機能変化を知ることができる検査方法が有効だと説明しましたが、なぜ脳の機能変化を知ることがレビー小体型認知症の早期発見につながるのか・・・その理由がいまいち分らないという方も多いのではないでしょうか。 そこで、脳の機能変化を知ることが、なぜレビー小体型認知症の早期発見に役立つのか、そのあたりの仕組みについてもう少し詳しくみていきましょう。 正常な脳内では、血液中からブドウ糖や酸素を大量に取り込んだ(消費)神経細胞の活動が盛んで、記憶力や判断力、集中力等を高めていますが、この脳内神経細胞の働きを阻害する物質がいくつか確認されています。 そのひとつが〝レビー小体〟と呼ばれる異常たんぱく質の一種で、この塊が大脳皮質を中心に多数出現すると、幻視や歩行障害といった患者特有の症状が現れるのです。 特にレビー小体型認知症患者の脳内では、頭頂葉や側頭葉の血流低下に加え、後頭葉(←視覚との関連が深い)にまで血流低下が拡大しているケースが多いため、SPECT検査やPET検査で、脳のどの部分の血流低下が著しいかをデータとして取り出し、レビー小体型認知症の特徴的な血流低下パターンと照らし合わせることで、より正確な診断をすることができます。
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