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コレだけは押える!若年性アルツハイマーかどうかの診断に使われる認知症テストの基礎知識

65歳以上の高齢者に見られるアルツハイマー病に比べ、若年性アルツハイマーは、比較的、病状の進行が早く、初期症状が現れてから重症化するまでの期間が短いようです。

そのため、人生はまだまだこれからだ!という時期に、アルツハイマー病の兆候が現れてしまった方のショックは計り知れないものがありますが、だからといってそのまま放置していると症状はどんどん悪化する一方なので、患者本人だけでなく、介護者にも大きな負担をかけてしまう恐れが出てくるということも忘れてはいけません。

若年性アルツハイマー病を完全に治す治療法や治療薬は、残念ながらいまだ確立されていませんが、近年はアリセプトをはじめ、新薬も徐々に開発されているため、早めに専門医による診断・助言を受けることで、症状の進行をある程度遅らせることは可能だと考えられています。

したがって、若年性アルツハイマー病の疑いがある場合は、できるだけ早期に一度、専門医による診断を仰ぐべきなのですが、病院ではいったいどのような検査が行われているのか、一抹の不安を抱いている方も少なくないはずです。

そこで、若年性アルツハイマー病の兆候がみられる患者に対して病院が行う検査の中で、アルツハイマー病にかかっているかどうかを診断するうえでよく使われている代表的な知能評価テストを2つほど紹介しておきましょう。
アルツハイマー病の疑いがある患者に行われる知能評価テスト
若年性アルツハイマー病にかかっているかどうかの診断を確定するまでに行われる検査方法はいくつか考えられますが、中でも被験者の知能を評価する方法として、比較的、広く用いられているのが「MMSE検査」と「長谷川式簡易知能評価スケール」の2つです。

どちらの検査方法も、被験者に対し〝口頭〟による質問形式で行われ、主に記憶力、計算力、言語力、見当識(現在の日時や自分がどこにいるかなどの状況把握)といった能力を測定しますが、5~10分程度で施行できる簡単な知能評価テストであることから医療機関でも広く使われています。
MMSE検査 長谷川式簡易知能評価スケール (HDS-R)
MMSE(ミニメンタル・ステート)検査は、米国のフォルスタイン夫妻が1975年に考案したもので、患者の理解力や認識機能を一連の質問で、ある程度測定することができる世界で最も有名な知能検査方法。検査方法自体は「長谷川式簡易知能評価スケール」と同様、被験者に対し口頭による質問形式で行われるが、図形問題などがプラスされている点で「長谷川式簡易知能評価スケール」とは若干異なった内容になっている。

詳細はこちら矢印MMSE検査
聖マリアンナ医科大名誉教授である長谷川和夫氏が1974年に考案した知能検査テストでMMSEよりも質問項目が少ないのが特徴。アルツハイマー病にかかているかどうかを短時間(5~10分程度)で判別するためのテストとしては定評があり、医療現場で利用されることも多い。

詳細については事項で説明矢印HDS-R




実践!自宅でも行える若年性アルツハイマー診断テスト【長谷川式簡易知能評価スケール編】

「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」とは、若年性アルツハイマーにかかっているかどうかを診断するための判断材料として実施される簡便な知能評価テストですが、主に記憶力を中心とした認知機能障害の有無を把握することを目的としています。

この診断テストは数年前にヒットした映画『渡辺謙/明日の記憶』でも登場しており、精神科医役の及川光博さんが、若年性アルツハイマー病の疑いがある主人公(渡辺謙さん)に対して実施しているので、興味のある方は、一度、映画の方をご覧になってみてはいかがでしょう。

ただし、この種の知能評価診断テストには、ひとつ大きな問題点があります。

映画の中でも見られるシーンですが、下記に示した「長谷川式簡易知能評価スケール」をご覧になっても分かるように、質問内容は、どれも大の大人に対して行うような項目ではないため、自分が若年性アルツハイマー病の疑いがあると言う事実を受け入れられない被験者(特に若ければ若いほど受け入れ難い)にとっては馬鹿にされたような気持ちになったり、真剣に答えない患者さんも少なくないといった現状が見受けられるようです。

そのため、被験者のプライドを傷つけないよう細心の注意を払いながら行う必要が出てくるので「長谷川式簡易知能評価スケール」は自宅でできる簡便な診断テストではありますが、あくまでアルツハイマー病の疑いがあるかどうかを知るために使う補助的な検査であって、病気を確定するための検査方法ではないということを理解しておくべきです。

※ 質問の仕方や誘導方法によって、被験者はうまく取り繕って病気ではないように装う方もいるので、客観的に観察する技術が必要なケースもあります。

しかし、手軽に行えるという点では優れた検査方法なので、病院に行くにはちょっと抵抗がある若年性アルツハイマー病の疑いがある被験者が身近にいるような場合は、一度、試してみるのもよいかもしれません。
判定方法

最高得点は30点満点であり、20点以下を認知症の疑い、21点以上を正常と判定した場合に最も高い弁別性を示す。なお、HDS-Rは認知症のスクリーニングを目的に作成されたものであり、得点による重症度分類は行わない。
長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
質問内容 得点
(30点満点)
1 お歳はいくつですか?
※ 2年までの誤差は正解とする。
0/1
2 今日は何年の何月何日ですか?何曜日ですか?
※ 年、月、日、曜日が正解でそれぞれ1点づつ。



曜日
0/1
0/1
0/1
0/1
3 私たちが今いるところはどこですか?
※ 自発的にできれば2点。5秒おいて、家ですか?病院ですか?施設ですか?の中から正しい選択をすれば1点。なお、病院や施設名、住所などが答えられなくてもよい。
0~2
4 これから言う3つの言葉を言ってみて下さい。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。
※ 以下の系列のいずれか1つで、採用した系列に○印をつけておく。また、一つの言葉に対して1点を与える。

1:a)桜 b)猫 c)電車
2:a)梅 b)犬 c)自転車
0/1
0/1
0/1
5 100から7を順番に引いてください。
※ 100引く7は?それからまた7を引くと?と質問する。最初の答えが不正解の場合は打ち切る。
(93)
(86)
0/1
0/1
6 私がこれから言う数字を逆から言って下さい。
※ 6-8-2、3-5-2-9を逆に言ってもらう。3桁逆唱に失敗したら打ち切る。
2-8-6
9-2-5-3
0/1
0/1
7 先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみて下さい。
※ 自発的に回答があれば各2点。もし回答がない場合、以下のヒントを与え、正解であれば1点。

ヒント:a)植物 b)動物 c)乗り物
a:0~2
b:0~2
c:0~2
8 これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言って下さい。
※ 時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など必ず相互に無関係なものを名前を言いながら一つずつ並べる。答える順番は問わない。
0~5
9 知っている野菜の名前をできるだけ多く言って下さい。
※ 答えた野菜の名前をメモ用紙などに記入する。重複しても構わないが、途中で詰まり、約10秒間待ってもでない場合には、そこで打ち切る。0~5 = 0点 / 6 = 1点 / 7 = 2点 / 8 = 3点 / 9 = 4点 / 10 = 5点
0~5